角の生えたうさぎは実在するか?乳頭腫
Esther van Praag Ph.D. –
translated by Atsushi Fukuda, DVM
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伝説と科学の邂逅...
16世紀から18世紀にかけて、イラストのような伝説上の角が生えたうさぎが描かれ、カモシカとノウサギの交雑種だと考えられていました。角が生えた動物を研究した数名の博物学者により、ラテン語でLepus cornutusと名付けられました。.
今日ではLepus cornatusの「角の生えた」頭部は空想ではなく、乳頭腫あるいは線維腫という腫瘍によるものだと断定されています。これらの腫瘍は、ショープパピローマウイルスへ感染することにより形成されます。.
ショープパピローマウイルス
ショープはアメリカのワタオウサギ(Sylvilagus sp.)から良性の乳頭腫(パピローマ)ウイルスを発見しました。主にアメリカ中西部で見られる疾患ですが、その他の地域でも報告があります。この疾患はカンジキウサギ(Lepus americanus)、ジャックウサギ(Lepus californicus)、そして飼育うさぎ(Oryctolagus
cuniculus)にも感染します。.
ショープパピローマウイルスはDNAウイルスで、パポバウイルス科と同じ特性を有しています。初期には、このウイルスには病原性が無いものと考えられていました。後に、このウイルスが存在することで悪性腫瘍が形成されることが発見されました。ダニ、蚊、および昆虫がウイルス伝播に関与していると見られています。蚊により媒介されていることは、パピローマ(乳頭腫)のほとんどがうさぎの体の「露出した」部分、例えば耳、眼瞼、鼻、肛門といった箇所に出来る事実に裏付けられています。
腫瘍には通常、感染力のあるウイルスは含まれていませんが、うさぎ間の感染も成立し得ます。 臨床症状と診断
ショープパピローマウイルスは濾胞細胞に感染して腫瘍化させ、皮膚を赤く、腫脹させます。感染部位の赤いスポットとして当初は見えます。最初の明白な症状として、丸いパピローマが形成され、後に角質化した角状のいぼになります。パピローマは主に眼瞼、頭部、そして耳介基部に認められます。
パピローマの診断は症状に基づいて行い、腫瘍の病理組織学的検査により確定診断がつきます。
パピローマを切除するには、広いマージンをとって外科的に切除するのが一番の方法です。もし組織を取り残すと、再発が起こり得ます。無治療で放置すると、疣は自然に退縮しますが、およそ25%のパピローマは悪性化(癌化)し、扁平上皮癌に発展します。リンパ節と肺への転移が起こりやすいです。病期が進行すると、腎臓と肝臓にも病変が及びます。
さらに別種のパピローマウイルスによる、飼育うさぎの疾患があります。口腔型パピローマウイルスはショープパピローマウイルスとは別種であり、口腔内のみに腫瘍を形成します。本稿では口腔型については記述しません。
治療
治療の選択肢として、外科的切除が挙げられます。切除法には、古典的な外科切除に加え、レーザーによる組織破壊、電気メスによる切除、液体窒素による組織破壊などがあります。 表皮型パピローマは、直腸型パピローマとは異なります。直腸型パピローマは肛門部に位置しています。サイズが大きくなったり、あるいは出血が見られるようになったら、いぼ全体だけでなく、直腸への付着部(脚部)も含めて切除することで再発を回避できます。
うさぎのパピローマに関する詳しい情報は、こちらをご参照下さい。 “「うさぎの皮膚病」- Skin Diseases of Rabbits” 著者E. van Praag, A.
Maurer and T. Saarony, 408 ページ、2010年. 謝辞
写真の使用許諾を下さった、Ray Sedman(アメリカ)、Tiffany Adams(アメリカ)、Christine Ozouf(フランス)、Arie van Praag(スイス)、Akira Yamanouchi,
(VEIN, Veterinary Exotic Information Network) 諸氏へ深謝申し上げます。 Further
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