新生児の食餌時間
Esther van Praag, Ph.D. - translated by
Atsushi Fukuda, DVM
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うさぎは新生児への授乳を頻繁には行いません。1日に1回か2回、巣へ戻るだけです。授乳時間は短く、せいぜい2~3分です。健康な子うさぎであれば、その後24時間の栄養を賄うだけの母乳を飲むことができます。1日の残りの時間、新生児は巣穴の奥深くに留まって身を寄せ、暖め合います。およそ22時間後、子うさぎは活動的になり、巣穴の入り口近くまで移動します。. 母うさぎは巣穴の近くに留まっているものの、巣穴に入るのは授乳の時間だけです。これは母性が欠落しているからではなく、肉食獣や捕食者の注意を巣穴に寄せないようにするための行動なのです。周囲の環境を注意深く確認してから、母うさぎは巣穴に戻ると子うさぎに覆い被さり、授乳します。. MediRabbit.com,
after a picture from Karen Comish ミルクを飲む生後一週間の子うさぎ 授乳時には、子うさぎはうまくいけば3~9秒で乳頭に吸い付きます。授乳中、子うさぎはおよそ1分間の間隔で吸い付く乳頭を代えていきます。この行動は15~20日齢まで続き、その後は唾液の付着した乳頭への吸い付きが、唾液がついていない乳頭に比べて速くなります。
5日齢うさぎの食餌」 ビデオ作製 Linda Baley. 新生児は母うさぎの腹の上を這って、次の乳頭への移動しています。 3~5分後、母うさぎは巣を後にします。子うさぎたちは排尿すると、その後22時間、巣穴で共に過ごします。 |
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うさぎの母乳の組成(Coates et al.,
1964. Brit J. Nutr, 18, 583-586より):
授乳ステージによるうさぎ母乳中ビタミン含有量(mg/ml)
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10~15日齢になると、子うさぎは固形物を口にするようになります。例えばペレット、牧草などで、量も増えて行きます。しかし新生児はまだ離乳できません。 実際に、消化管はまだ未発達です。生後数週間の間、子うさぎの胃と上部腸管内はほぼ無菌的です(腸内細菌叢を欠いた状態)。これは動物の世界では珍しいことです。母乳のpHは5~6.5の間です。この酸性度であれば細菌は生存可能であり、腸および盲腸内で増殖・定着可能です。うさぎのミルクはC8およびC10脂肪酸が豊富です。これらの脂肪酸には静菌作用があり、新生児の消化管内での細菌増殖を抑えています。これらの脂肪酸は「ミルクオイル」とも称され、活性化には2つの要素である、母乳と飲む側の胃が必要です。ミルクオイルにより生後日が浅い新生児の体内で病原微生物が増えることが抑えられ、壊死性腸炎や全身性敗血症の発生を防いでいます。出生時と、母乳を介して取り入れられた細菌は胃腸を通過しても生きており、盲腸と腸の最後部位にあたる結腸・直腸とに蓄積されます。 |
MediRabbit.com, after a picture from Karen Comish 生後1日の新生児 |
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10~15日齢になると新生児は力強く、好奇心旺盛になり、巣から離れるようになります。固形物(牧草、新鮮な野菜、ペレット)や、母うさぎの硬糞を口にするようになります。6週齢までには、子うさぎのミルクを飲む量は徐々に減って行きます。結果として: ー上部消化管におけるC8およびC10脂肪酸(ミルクオイル)の濃度が低下します; ー胃内pHが5~6から1~2へと低下し、細菌が侵入できないよう障壁となり、食物中の細菌を殺菌します; ー以前に摂取され、盲腸と下部消化管・直腸内で生存していた微生物が増殖を始めます。 盲腸から上部小腸(十二指腸)への腸内細菌の移動が可能になります。適切な細菌が存在していれば、固形物の適切な消化と発酵が可能になります。このプロセスが完了するのに数日から数週間を要します。 消化管内微生物の定着時期の差は非常に重要であり、同時に繊細な過程です。実際に、消化管内で発育する微生物は食餌のタイプ、牧草、ストレスの影響を受けます。まだ無菌的な腸管に病原性微生物であるクロストリジウム属菌などが定着してしまうと、臓器不全や壊死性腸炎、下痢、(致死的な)胃腸障害、敗血症を引き起こします。 そのため、生後8週齢までは母うさぎに子育てを任せることが重要であり、6週齢ないしそれ以前に母子を引き離さないようにします。一旦、消化管内に細菌群が定着すれば、病原微生物が増殖することを防げるでしょう。 |
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謝辞 Karen Comishと、Linda Baleyに素材使用許諾を頂いたことを深謝申し上げます。 More information Coates ME, Gregory ME, Thompson
SY. The composition of rabbit’s milk. Br J Nutr.
1964;18:583-6. Harcourt-Brown F. Textbok of Rabbit Medicine. Butterworth Heinemann,
Oxford, 2002, p 55-56. |
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