絶対に

うさぎの歯をご自分で切らないで下さい!!!

 

 

上下切歯の正常な長さと並び(写真:A. van Praag)

正常な咬合では、下顎切歯が上顎第一切歯と第二切歯の間に、のみ状に収まっています(写真:A. van Praag)

正常な咬合では、上顎切歯がわずかに、下顎切歯に覆いかぶさっています。下顎切歯は上顎の第一切歯と第二切歯の間に収まっています。二本の第二切歯は、二本の第一切歯の真後ろに生えています。  

歯科疾患をもつうさぎの臨床所見

一見、正常に見えますが

根尖膿瘍に苦しんでいます。(写真:

(写真: Veterinary Exotic Information Network)

深刻な切歯の不正咬合

(写真: Dr. C. Morales, Prestonwood Animal Clinic, Houston, USA)

うさぎの伸びすぎた切歯を、ワイヤーカッターや爪切りで切ることは絶対に止めて下さい!!! 

そうした切り方は痛みを伴う乱暴な方法であり、遅かれ早かれ、もっと深刻な歯科疾患を引き起こすことになります!!!

回転工具(Dremelなど)を使って切歯を切る方法も、きちんとした訓練を受けずに、あるいは獣医師による指導を受けずに、行ってしまうと危険です。うさぎを安全に保定し、口を開け、切歯の断面を整え、歯に過剰な熱が加わらないように注意し、削る長さを適切に留め、舌を傷つけずに処置ができますか?疼痛緩和はできますか?

 不動化反射はうさぎに鎮静をかけている訳ではありません。うさぎは予期せず起き上がったり、体の向きを変えることがあります。回転工具で切歯を切っている最中に暴れたり、逃れようともがくかもしれません。結果、どうなるかは想像しない方が良いでしょう

いけません!!!

いけません!!!

これらの写真は解説のために撮影・加工したものです(写真:A. van Praag).

 

ご家庭で切歯を切ることは、うさぎに多大なストレスと痛みを与えてしまいます。結果は恐ろしいものです。ワイヤーカッターや爪切りで切歯を切った結果、よく見られる歯科疾患には、次のようなものがあります。

-      縁が鋭く尖り、食餌やグルーミングの際にうさぎ自身を傷つけてしまう;

-      切歯に負荷がかかることで、歯肉縁から上ないし下の箇所で骨折してしまい、縦割れしてしまう;

-      歯根に損傷が起きることで、歯の伸長が止まってしまう(歯内病変);

-      歯髄が露出することで、歯髄炎(歯の内部にある、歯髄の炎症)を起こしてしまう;

-      膿瘍の形成と、周囲組織や歯槽骨の変性を起こしてしまう。

-      顎骨骨折;

-      歯を切る際に歯に多大な負荷がかかるため、歯髄と歯周および根尖周囲の神経が振盪されて疼痛を生じます。

切歯の不正咬合がある場合には、定期的に自宅で切ってしまうことで歯並びはしばしば悪化し、最終的に獣医師の診察を受ける段階では、侵襲性の高い歯科処置が必要となってしまいます。時にはあまりに状態が悪いために、うさぎを安楽死させることさえあります。

 

リラックスしているGeorgie

 

顎の膿瘍を郭清した後のGeorgie

 

Georgie,

the black tongued rescue…

 

私がGeorgieを引き取ってすぐ、彼を診察してくれていた獣医師の元へと連れて行きました。先生はGeorgieとの再開を喜び、そしてGeorgieの歯はかつて診た中で最もひどい不正咬合だと言いました(先生はGeorgieが私に引き取られる前に、切歯を抜歯しましたが、当時の飼い主はGeorgieの飼育を諦め、手術から一週間後に所有権を放棄しました)。先生は抜歯した歯がいかにひどい状態だったか残しておいたのですが、クリニックじゅうを探しても見当たらなかったので、私はその歯を見ることはできませんでした。

Georgieは、うさぎの切歯を若い頃から家庭で切ってしまっているとどうなるかを示す生き証人です。複数の根尖膿瘍ができてしまいました。

左の写真は顎にできた膿瘍を治療した術後のものです。抗菌薬を染み込ませたガーゼを丸めたものが患部に埋め込まれ、外から縫合して固定されていました。10日後に糸を切り、ガーゼを引き抜いて、傷の治癒を促しました。その際に、多量の出血がありました。獣医師はこんなに鮮血が出ることを言い忘れていたのです!私はとても心配だったので先生に電話をかけましたが、出血があるのは傷が治癒に向かっている良い徴候だとのことでした。それでも診察してもらうよう求めました。手術は成功し、鎮痛薬と広域スペクトラム抗菌薬の投薬だけで快方へと向かいました。アブセスの手術からおよそ28か月に渡って、食餌をより細かくふやかして与えて行き、この体重12ポンドのうさぎは最終的に使える歯が無くなりました。まだ臼歯は残っていましたが、彼が亡くなる3年前には伸びなくなっていました。たくさんの小さなアブセスが顎にはできており、鎮痛薬と抗菌薬は生涯に渡って投与が必要でした。

Georgieの特徴は舌が黒いことでした。かかりつけの獣医師によれば、10%のうさぎは舌が黒いそうで、麻酔をかける際には血色が判別できず大変とのことでした。私は自分のうさぎの舌の色しか目にしておらず、他に舌が黒いうさぎを見たことがないので、それを聞けて良かったです。かわいそうな歯なしのGeorgieの舌が垂れ下がるのを見たくはありませんでした!:)))

Kim Chilson

 

歯科疾患の治療は、経験のある獣医師に任せましょう

歯科疾患が疑われる、あるいは見つかったケースでは、うさぎに意識がある状態での口腔内検査に引き続いて、全身的な検診と眼科検診、そして全身麻酔下での口腔内検査と、様々な角度からの頭蓋のレントゲン撮影を行って歯根および歯周組織の状態を判断し、感染やアブセス形成、骨髄炎の徴候がないかを調べます。

うさぎの口腔は狭く、適切な視野を得るには開口器の使用が欠かせません写真Veterinary Exotic Information Network)

 

うさぎの歯科に使用される器具セット写真www.blackness-vet.co.uk/index.htm)

専用の歯科器具を使用することが最も重要です(写真:Veterinary Exotic Information Network)

さぎの口腔は狭く、顎の可動範囲も限られています。そのため意識があるうさぎの口腔を、耳鏡で検査することは難しいのです。歯の異常や病変は容易に見逃されてしまいます。歯の異常のしっかりとした確認と治療(切歯のトリミング、歯冠を削って短縮する、など)には、うさぎに麻酔をかけ、開口器や開頬器、卓上型開口器など、適切な器具を用いなければ不可能です。もしうさぎに麻酔薬へのアレルギーがあったり、健康上の問題で麻酔がかけられない場合には、麻酔ではなく鎮静をかけて伸びすぎた切歯のトリミングを行うこともできます。

切歯と臼歯は急速に伸びており、うさぎの生涯を通じて、年間に1112cmほど伸びます。つまり、異常に伸びた切歯は46週間ごとに、時には3週間ごとにトリミングしなければなりません。切歯の抜歯は、定期的に獣医師にかからずに済むだけでなく、軟部組織の損傷やアブセスの形成、二次的な涙嚢炎や鼻涙管の閉塞といった問題を避けるための選択肢のひとつです。抜歯した歯が再び生えてくることは稀です。

重度の歯科疾患で定期的な歯のトリミングが必要で、抜歯が不適応なうさぎであれば、獣医師は飼い主に切歯の削り方を指導してくれるでしょうが、特殊なケースに限られます。

 

 

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A special thank you to Kim Chilson, for sharing the story as well as pictures of her beloved Georgie rabbit

A special thanks to Dr. C. Morales and Debbie Hanson for the pictures of malocclusion from Stella

Thank you to to Kaspi for his help and demonstration of the dangerous clipping methods in rabbits

Thank you also to Flora, and the other rabbits that remained anonymous

 

 

 

e-mail: info@medirabbit.com