うさぎの「開帳肢」の矯正

 

 

by Dana Krempels, Ph.D.

University of Miami Biology Department

 

 

 

一部のうさぎは「開帳肢」と呼ばれる状態で生まれてきます。すなわち前肢、後肢、あるいは四肢全てが、小さなアザラシのひれ足のように側方へと広がってしまっているのです。大部分の専門家らは開帳肢が遺伝的な要因(おそらく遺伝的に結合組織が弱いために起こる)によると考えていますが、摩擦のないつるつるした床で育てられるような、環境要因によって悪化することがあります。うさぎの赤ちゃんが巣から這い出してきたらすぐに、100%の綿や表面がざらざらしたバスマットの上で遊ばせたり運動させることで、開帳肢の発生を減らすことができるかもしれません。

開帳肢の赤ちゃんうさぎに対する矯正

開帳肢のうさぎは通常、ぎこちなく動くことができますし、大人の開帳肢のうさぎが家の中をやすやすと駆けまわれることも知っています。しかしながら、異常な姿勢のために他の疾病を起こしうることがあるので、開帳肢が見つかってすぐ、3から8週齢のごく若い仔うさぎに対して矯正を行うのは悪い考えではありません。原因が何であれ(生まれつきか、あるいは栄養によるものか)、一部のケースでは仔うさぎに対して下に図示したようなシンプルで、家庭で作れる矯正器具を装着することで、開帳肢を矯正することができるのです。

Cork =コル, cotton pads (round) = 丸めた綿

下の図はうさぎの前肢への矯正具の装着方法を示しています。

-      そっとうさぎの肢を正常な位置へと伸ばし、両端に綿球をあてたコルクを、うさぎの手首あるいは手首よりわずかに高い位置に当てます。

-      開帳が重度で、肢を揃えようとするとうさぎが痛がる場合には、長いコルクから始めて、段々と(数日おきに)矯正具を外し、コルクを少し短くして、再び巻き直します。

-      あなたが矯正具とうさぎとを支えている間に、もう一人の協力者に注意深くスポーツ用のテーピングを、肢と矯正具を包むように巻いてもらいます。

-      テープがきつくなりすぎないようにして下さい!テープがきつすぎると、血流が遮断されて、病状は悪化してしまいます。テープが緩すぎれば矯正具が抜け落ちてしまうので、この巻きつけは矯正の中でも最も技術を必要とする箇所です。テープを巻く範囲も、個々のうさぎによって調整が必要です。工夫してみて下さい!

-      うまく装具が巻けると、うさぎは立てるようになりますが、(少なくとも一時的には)前肢を個別に動かすことはできないことでしょう。

-      うさぎは最初こそ非常にうろたえて、もがいたりしますが、数時間から12日後には装具に慣れてくれて、「3本肢」で跳ねられるようになります。

前肢の矯正具を装着したところを、上から、そして斜めから見た図です。

Cork = コルク, adhesive tape band around brace = 装具に巻きつけた自着性包帯, cotton padding = 綿の詰め物, cotton pads  = 綿の詰め物, tape band = 包帯

 

後肢の巻き方はより技術が要ります。装具と手順は前肢と同様ですが、装具をつける位置は足首のすぐ上になります。

うさぎは後肢への矯正具装用を好まず、もがきます。しかし、数時間で装具に慣れ、跳ねるようになります。

後肢への矯正具装用の際には、尿道開口部や肛門をテープや詰め物で塞がないように気をつけて下さい!そして詰め物やテープが糞尿で汚れていないか、こまめにチェックしましょう。もし汚れてしまったなら、軽くゆすぎ洗いし、完全に乾かしてから、再度包帯を巻くようにし、敏感な皮膚に炎症を起こさないようにします。

後肢への装具着用方法を図示したのが、以下のイラストです。

 

Cork = コルク, adhesive sports tape band(just above hocks) = 自着性包帯(踵の真上に巻く, cotton pads = 綿の詰め物, adhesive sports tape band (all the way around both legs & brace) =自着性包帯(両足と装具を完全に覆うように巻く), cotton pads =綿の詰め物

警告:この装具をうさぎの四肢に同時に装着したことはありません。ですからどの程度、うまくいくかは不明です。試してみる価値はあるでしょう。もしうさぎが非常にストレスを感じているようなら、一度に前後どちらかの肢だけにしておくのが良いでしょうし、おそらく前肢から開始することでうさぎに装具へ慣れさせることができ、後肢にも数日後に装具をつければ良いでしょう。治療によって状態を悪化させるようではいけません!

こうした方法で矯正を行っているうさぎでは、毎週のように巻き直しが必要となることがあります。装具の汚れをチェックして、湿ったり汚れたら交換して下さい。

装具を交換する度に、うさぎを数分間、滑らない床の上で歩かせて、改善具合を確かめて下さい。軟骨と筋肉が強化され、正しい姿勢を保てるようになるまで数週間かかることでしょうが、効果は出ます。生涯に渡って運動機能を改善するためには、忍耐が必要です。

開帳肢の成うさぎに対する矯正

既に開帳肢の姿勢で肢が固定されてしまっている成うさぎに矯正を行うのは容易ではありません。肢を正常な位置に戻すことは痛みを伴います。ですから矯正を試みるのであれば、非常にゆっくりと実行すべきであり、一度に肢を揃えようとして近づけ過ぎてはいけません。うさぎが矯正に耐え、装具を外さない程度に留めます。

うさぎが単に装具を拒絶して、外してしまったり、非常に嫌がる素振りを見せるかもしれません。そうした場合には、うさぎが慣れてくれるか10分様子を見ましょう。しかし本当に嫌がっているうさぎに無理やり装具を付けて苦痛を与えてもいけません。ほんの少しの手間と清掃で、開帳肢のうさぎを完璧にハッピーにできるのです。

矯正を受け入れる成うさぎに対しては、コルクを用いない装具、あるいは硬い素材を用いない方法が一番うまくいくことが分かりました。(詳細については近いうちにビデオ付きで寄稿します。今はこの記事が一助となることを願います。)

私たちが開帳肢の成うさぎに装着してうまく行った矯正方法を図示します。

thick pad of fur = 被毛で作った厚い緩衝材, not too stretchy = 伸縮性を持たせ過ぎない, Vetwrap = 自着性包帯, water-proof adhesive tape over Vetwrap = 自着性包帯の上から防水性の粘着テープを貼る

方法

1.  うさぎをグルーミングした際に取れた、きれいで柔らかい被毛で、厚い緩衝材を作ります。(他のうさぎから取った毛でも構いません)。

2.  緩衝材となる毛を2つに分けて丸め、それぞれ直径2.5cmほどの大きさにします。

3.  緩衝材を肢の外側に、目の細かい紙テープで仮止めします。(きつくなり過ぎないように!)

4.  緩衝材を当てた肢の箇所に、2.5cm幅の伸縮性ガーゼを巻きつけます。

5.  2.5cm幅のヴェトラップ(自着性包帯)をガーゼの上から巻き、ずれないようにします。(お好きな色を選んで下さい!ヴェトラップの太さは10cmあるので、適当な幅に切らなくてはなりません。)

6.  ここが工夫のいるところです。防水性の粘着テープ(ジョンソン&ジョンソン社製が一番です。他のブランドは中国製で、粘着力が不十分です!しかしいつJ&J社が製造を中国へ委託するかは分かりませんが。)を3850cmの長さに切ります。

7.  片方の肢に粘着テープを巻きつけたら、もう片方の肢へテープを「橋渡し」します。もう片方の肢周りにも粘着テープを巻きつけてから、橋の箇所を通ってテープを戻し、粘着面同士を貼り付けます。

8.  両肢をどれだけ近づけるかは、そのうさぎの股関節の硬さによって決めなくてはいけません。膝同士がぶつからないこと、そしてうさぎが楽に動けるようにします。肢が多少、異常な開き方をしていても構いません。

9.  できました!うさぎを地面に降ろして、苦痛がないかよく観察します。肢の幅が狭過ぎたら、テープを巻き直して、適切な幅に調整します。

幸運を祈ります!

 

 

 

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